任天堂が今までTGSに出なかった理由は
任天堂はこれまで、東京ゲームショウ(TGS)の参加を頑なに拒んできた。
その理由は、1回目のTGSが開催される時の利権争いによるしがらみが原因だったのではないか、という説が有力だ。
参照記事
東京ゲームショウに欠けたピースは埋まるのか?【オールゲームニッポン 第25回】 | インサイド
要するに「我々は世界の任天堂である!どこぞの馬の骨とも知れぬ輩の主催するイベントなど出れん!」
という矜持を示してきたのが昨年までの任天堂だった。
また主に関東圏の人間しか行けないイベントなので、京都に本社がある任天堂には気に入らないとか。
入場料を取るというイベントが任天堂の企業理念に沿わないなどとも言われていた。
参照記事
TGSになぜ任天堂は参加しないのか また、参加するべきなのか:ぼむぼむのゲーム全般ブロマガ - ブロマガ
だが、これらはおかしな話である。
何故なら、関東圏どころか日本人が参加することが困難な米国開催のE3には、任天堂は毎年出展しているからだ。
参照記事
この記事によるとE3の入場料は通常249ドル(約27390円)とニンテンドースイッチが買えてしまう価格である。
これに対して入場料1000円のTGSに“入場料取るから”と参加しないのは奇妙な話だ。
つまり、企業理念だとか、西日本の人のためだとか、そんな神聖なる理由では全くないということだ。
側から見たらくだらない利権争いが最大の理由だったと推測できる。
無論、これは任天堂のみならず、TGSを主催するコンピュータエンターテイメント協会(CESA)も絡んだややこしい問題なのだろう。
オトナの世界ってやつは、一筋縄ではいかないゲームだ。
そんな任天堂がTGSに参加したワケとは
しかし2018年、ついに任天堂は重い腰をあげて、TGSに参加した。
利権絡みの争いに進展があったのだろうか?
それとも日本企業として、日本のゲーム業界の未来のために行動を起こしたのだろうか?
日本経済新聞の記事によるとこうだ。
参照記事
任天堂、東京ゲームショウ「初参加」 ソフト業者囲い込み: 日本経済新聞
要約すると「任天堂はインディーのクリエイターや中小メーカーに優しくなり、方針転換を図っている。WiiUの二の舞にならないようにソフトの拡充には背に腹はかえられない状況だ」
という旨のことが書いてある。
「背に腹をかえられない」という表現には違和感を覚える。
困窮した任天堂は藁にもすがるような気持ちでTGSに参入したのだろうか。
インディーズゲームのスポンサーという形で初参加する任天堂
今回、重要なのは“任天堂はインディーゲームコーナーのスポンサー”としてTGSに参戦したことだ。
後はビジネスデーのミーティングのみで、自社のゲームのPRの場だとは考えていないのは相変わらずだ。
任天堂は日経の記者よりも、もっと落ち着いた目線で市場を見ている。
それはインディーズゲームが、ニンテンドースイッチと相性が良いことを理解しているからだ。
スイッチのインディーズでも既にいくつかのヒット作や話題作があるが、それらの多くは、シンプルで低容量だ。
これはニンテンドースイッチの特性とマッチしている。
今のインディーズゲームの多くは、シンプルで手軽な操作性に独創的なアイディアを取り入れて、魅力的な作品にしている。
グラフィックも昔ながらの2Dが主流で、マシンパワーやストレージ容量もそんなに要らない。
このようなゲームは、まさにシンプルで独創的なハードであるスイッチでこそ遊ぶのに相応しい。マシンパワーやストレージにも自信はないしな。
スイッチはPS4やPCよりもゲーム起動までが素早いし、ソファで寝転がりながらでもプレイが可能で、かと言ってスマホのようにコントローラーに困ることもない。
ニンテンドースイッチにとって相応しいゲームを作っている人達を、任天堂が支援する。
ごく当たり前のことに任天堂は気づき、実行したに過ぎない。
つまり任天堂がTGSに参加した理由は、任天堂とインディーズクリエイターの間で利害の一致があったからだ。
これは下らないしがらみに固執するよりも、ビジネスとして正しい。
インディーズゲームにはビデオゲーム界の未来がある。
更にここからは私見だが、今のインディーズゲーム達は、ビデオゲーム界にとって救世主のような存在だ。
今のビデオゲーム業界は、大企業も新興企業も、ユーザーから金をむしることしか考えてないようなくだらないソシャゲー・課金ゲーを大量に生み出し、ゲームとしての面白さを追求する姿勢は二の次となってしまっている。
特に新興企業で伸びているゲーム会社はみんなそうだ。
彼らはキャラクターを活かして、いかにガチャを回してもらうかにばかり夢中だ。
それらは最早パチンコのような、スマートフォンを使ったギャンブル装置。
ギャンブル装置も一部はつまらない訳ではないのだが、ビデオゲームとしての面白さがどこかに行ってしまっている。
それらにはビデオゲームへの愛や、「新しい創作物を生み出そう」という意欲があるとは到底思えないのだ。
そこでインディーズクリエイター達の出番だ。
彼らは純粋にビデオゲームを愛し、面白くて独創的な作品を生み出すことに夢中だ。
ギャンブル装置などはつけず、良心的な価格で購入した後は、好きなだけ遊ぶことができる。
私は彼らの姿勢こそが、ビデオゲーム本来のあるべき姿に見える。
任天堂にも、おそらく同じ考えを持つ人がいるはずだ。
何故なら、彼らは共に新しい遊びの追求者であるはずだからだ。
任天堂はTGS2018という舞台で、ビデオゲーム界の未来を考えている。
(もちろん同様にインディーズを支援しているソニーもだ)