過酷な時代にもバーチャルマーケットには華やかな「未来」があった
2020年は、そのSF的な数字の響きの通り、未来を感じさせる年になった。
しかし、それは輝かしい未来ではなかった。
待っていたのは、疫病が蔓延した、ディストピア的な未来だった。
オリンピックはおろか一切の催しものが開催されず、誰もが家に閉じこもってオンラインに救いを求める時代。
疫病が世界の全てを変えてしまった。
セレブも貧乏人も、誰も外出を許されない鈍色ゴールデンウイーク。
もはや外出すら、叶わぬ夢なのだろうか。
しかし、そんな暗い世の中にも一筋の光明があった。
それがバーチャルマーケット4(Vケット4)だ。
皮肉にもリアルなコミックマーケットが開催できなくなった一方で、この仮想空間での同人イベントは、さらに注目を集めることになった。
公式サイト:
現実と虚構が入り混じったパラリアルトーキョー
なかでも、目玉になった「パラリアルトーキョー」はSFとリアルがミックスされたラブリーな空間だ。
まず参加者はここを訪れることを、強く推奨する。
憧れた未来は、確かにここにあった。
SF好きな人も、リアルな東京に慣れ親しんだ人も、愛おしくなれる空間だ。
パラリアルトーキョーには、東京駅やスカイツリー、東京タワーといった現実の建造物に加え、ウルトラマンやガンダムの姿も。
眼下に見知ったモニュメントと架空のキャラクターが混在しているのは、なんともワクワクさせされる。
また大企業も、このイベントに力を注ぐようになった。
セブンイレブンはよりリアルになり、アウディの試乗も可能で、TOHOシネマズでは映画の宣伝が行われている。
そして、現実の世界でイベントをするはずだった、本来ならコミケ会場であるビッグサイトの姿も確認できる。
同様に本来はオリンピックをするはずだった場所、新国立競技場には聖火がともり、Vケット4に投資してくれた諸兄らの名が、石碑に堂々と刻まれている。
もちろん、今は現実のこの場所に行くことはできない。
しかしパラリアルトーキョーは、もはや外出する必要ないのでは?というくらい完成度が高い。
惜しむらくは、これが5月10日までということだ。
素敵な未来空間行きの切符は、そこそこ良いPCがあれば大丈夫
さて、このバーチャルマーケットにはどうやって行けるのだろうか。
VRCについては、またいずれ詳しく導入方法を書きたいと思う。
今回は簡単に説明しよう。
もっとも簡単なのは、steamから他のゲームと同様にDLして、インストールすることだ。
この未来的コミュニケーションツールは、無料で始められる。
一つ誤解されがちなのが、重要なのは、ヘッドマウントディスプレイ(VRゴーグル)は必須ではないという事だ。
もちろん、あった方が良いに越したことはない。私は例えばHTC VIVEを使っている。
VRは素晴らしい。
月並みな物言いだが、他では味わえない体験ができる。
360度、仮想の世界に包まれ、今自分のいる部屋からどこか違う空間に、確かに移動できる。
さらにVRCでは、仮想の体で違う自分になれる。
これは本当に圧倒的な体験だ。
だが、VRの遊びはまだ手軽とは言えない。
正直セットアップも大変だし、顔に被れば重く、たくさんのコードと格闘することになる。
さらに発光する画面を眼球の目の前で見続けていれば、当然疲労がたまるのも早い。
そして何より、お値段が張る。
スタンドアローンタイプのオキュラス GOというのもある。(VIVEが据え置き機なら携帯ゲームのようなもの)
これなら少し手軽だが、様々な制限があり、スペック的にはVIVEには及ばない。
つまり、まだまだ未開拓な技術なのだ、VRの世界という奴はね。
我々は今間までのゲームを、ほとんどディスプレイを通して見てきた。
だから、VRCも、まずはそのようにすればいい。
「どうせ大げさな機械が要るのだろう」と思っていては、いつまでも前には進めないからね。
ただPCは、お古のものでは少し厳しい。
グラフィックボードを積んでいて、ここ2年くらいに買ったものなら問題はないと思うが……。いずれ別記事で、詳しく説明したい。
「肉体を伴わない外出」も悪くない。
現在の世界は、ほんの数か月でえらく変わってしまった。
疫病で一部の人々は肉体がむしばまれ、より多くの人々は精神が荒んでいる。
これを書いている私も、少々疲弊している。
バーチャルマーケット及びVRCは、そんな荒んだ現在の世界の、一筋の光明ではないだろうか。
それは、夢のような輝かしい未来を感じさせる場所で、現在の地球上で唯一イベントが許された場所だ。
荒廃した現実と、日常を再現した仮想空間。
これは映画マトリックスの話ではない。今現在、現実に起こっていることだ。
マトリックスでは、主人公ネオが仮想空間から現実に飛び出すことを選んだが、逆に現実世界から仮想空間に行くことで世界が救えるなら――。
肉体をともなった外出ではなく、VRで仮想の外出を選ぶというのは、どうやら悪くない選択のようだ。