VC版発売のポケモン金銀、オリジナル版発売当時の想い出
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ ――藤原定家
かつて、1997年に発売するよと宣言しておいて、何度も発売延期して、やきもきさせた大作ゲームがあった。
98年になっても出ない、99年の夏になっても出ない。
そのゲームは、最初は名前を「ポケットモンスター2」と言っていた気がするが、いつの間にやら「ポケットモンスター金銀」と名を変えていた。
また最初はゲームボーイで出ると言っていたのだが、その後継機であったゲームボーイカラー向けになってしまっていた。
ようやく発売に至ったのは、2000年問題で騒がしかった99年の11月のことであった。
さてそんなに待たせてハードルを上げてしまったのだから、さぞや期待外れだったのだろうか、と思いきや、飛ぶように売れた。
さて、ここからは昔の思い出を話そう。
金銀のパッケージは見た瞬間に心が躍るような素晴らしいものであり、もはやポケモンのパッケージを見ただけでああいう気持ちになるのは、「いいトシ」になってしまった現在ではありえないのだろう。
その名の通り「金」と「銀」の色をした箱は見た目が派手で、きらびやかで高級な物に思えた。
紙の箱でできていたのもいい。プラスチックのケースよりも、紙箱の方が優しさに溢れている。地球には優しくないかもしれないが。
現在の私はXYがシリーズ最高傑作だと思っているし、サンムーンの対戦環境も好きだ。
だから、すべてが「昔はよかった」などと年寄りじみたことを言うつもりはさらさらないのだが、それでも「体験」という意味では、もう金銀に勝るものは出てこないだろう。
そう思うとふと寂しさもわいてくるが、それだけ素晴らしい体験が99年の11月に起こったのである。
ポケモンの世界に色が付き、現実世界の時間や曜日がゲームにも反映され、ポケモンに道具を持たせられるようになり、なつき度や色違いやポケルスといった隠し要素に驚き、冒険が終わりと思いきや、懐かしきカントーで新たな旅が始まる……。
思い出してほしい、アカネのミルタンクの「ころがる」が止められなかった時を。
トゲピーがタマゴから生まれた時を。
赤いギャラドスと出会った時を。
ガンテツさんにボールを作ってもらった時を。
ワタルがロケット団を「はかいこうせん」でぶっとばした時を。
そして、シロガネ山でレッドと戦った時を。
おそらく、今金銀のバーチャルコンソールをプレイしても、HGSSを遊んだ時がそうであったように、99年と同じような感動を覚えることはない。
代わりに、ノスタルジーには浸れるだろう。だがそれがどのような感情なのかは、やってみなくてはわからない。
「あの頃を思い出して懐かしい、楽しい」なのか、「今やると思ったよりつまらない」かもしれない。あるいは、「夢特性のポケモンを手に入れるため」という事務的な理由でやるのかもしれない。
想い出は綺麗なまま胸の中にしまっておきたい、とも思うし、少しだけあの頃の自分に触れてみようかな、という気持ちもある。
そんな複雑な気分にさせるのが、今月発売の金銀バーチャルコンソールなのだ。