スーパードンキーコングは、ビデオゲームに「絵画的な美しさ」を持ち込んだ。
美しいグラフィックスのゲームというと、3DCGを用いた映画のようなビジュアルを連想するだろう。
しかし今から四半世紀も前の1994年、ピクセルアート(ドット絵)の世界において、絵画のような「美しさ」を提供したゲームがあった。
それが「スーパードンキーコング」だった。
まるで絵画のようなビジュアル。これが本当にドットで描かれているのか。
当時のスーファミユーザーは衝撃を受けた。
先に出た「スーパーマリオワールド」や「ロックマンX」のドットも確かに愛らしい。
しかしそれは、ドットとしてのビジュアルを追求した姿であり、絵画的な「スーパードンキーコング」は何か根本から違っていた。
スーパードンキーコングのグラフィックスが美しい理由
実はスーパードンキーコングのグラフィックスには秘密があった。
私がその“トリック”について教えてもらったのは、だいぶ後のことだった。
そもそも、「スーパードンキーコング」はドット絵をポチポチ打ちこんで作っていたわけではなかった。そりゃマリオやロックマンと違うわけだ。
スーパードンキーコングには、3Dモデルを2Dドットに落とし込む技術が用いられていた。
3Dモデルを2Dアニメ調に見せる技術はここ10年のアニメ界のトレンドであるが、それを15~25年早くゲーム界に持ちこんだスーパードンキーコングは素晴らしいな。
参考リンク
さらにドットを点滅させることで、擬似的に色の数を増やしていた。
スーファミは同時表示できる色の数は最大で256色と決められていたが、これによりそれよりも多くの色が画面上に表示されているように見えていたという事らしい。
鬼のような難易度のアクション
さてこのスーパードンキーコング、非常に難度が高い。
海外では難易度が高い方が評価も高いと聞くが、当時クリアできなくて諦めたちびっ子はたくさんいたはず。
「クリアまでやらないと、もう買ってあげないわよ!」と親に叱られ、二重に理不尽なトラウマを味わったちびっ子(現おじさん)もいるはずだ。
スーパードンキーコングはギリギリのジャンプ、シビアなタイミングの回避、それがあらゆるコースで求められる。
そしてプレッシャーのかかる強制移動面が多いのなんの。
タルやロープやリフト、トロッコ。それぞれで地獄を見ることになるだろう。
スーパードンキーコング、アクションとしての欠点
そしてグラフィックの美麗さが仇になっており、コースによっては自キャラや敵キャラが非常に見辛い。
あえて見づらくしていたのだろうか?洞窟や工場は薄暗すぎ、雪山はただでさえ難しいのに吹雪で全然見えん。
背景が主張しすぎた。背景はドンキーやディディーよりも目立ちたがりだった。
この辺はさすがにやり過ぎと反省したらしく、2では背景は簡素で見やすくなっている。
また、操作してない方のキャラが常に画面に映っていて、一瞬どっちを操作しているかわからないこともある。
微妙な段差や階段では、敵の当たり判定がおかしいんじゃという所もある。
さらにダッシュ移動と、近接攻撃(ローリングアタック)が同じボタンに配置されているのも、今考えるとおかしな仕様だ。
ファイアマリオを見習ったのかもしれないが、あれは遠距離攻撃だから事故ることはまずなかった。
が、スーパードンキーコングでは攻撃しようとしたら敵にそのまま突っ込んだり、ダッシュしようとしたらローリングを誤爆してミスることもある。
あとはステージが鬼ムズだが、ボスが弱すぎて拍子抜けというアンバランスさも気になる。
そして最も子供たちを絶望させたのが、セーブポイントの少なさである。
1ステージクリアしたらセーブされるのが当たり前?
そんな甘っちょろい時代ではなかった。少なくとも3,4ステージをノーコンティニューでクリアしなければ、前の面のセーブポイント戻されるという「そこまでするか?」と人間性に欠ける仕様だった。
ゲキムズだったスーパードンキーコングもSwitchの力により、初心者でも何とかクリアできるレベルに
さあ"悪口"はこれくらいにしておこうか。欠点は誰にでもある。ましてやこれはイギリス人の作ったモノなのだから尖ったところがあるのは当然だ。
英国面とは (エイコクメンとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
Switch版では、この鬼のようだったスーパードンキーコングも、初心者でも簡単に遊べるようにはなった。
というのも、クイックセーブでどの面の前でもセーブできるからである。ステージ中にもできる。
そしていざとなれば禁断の奥義「巻き戻し」もある。
二代目ドンキーコングへと代替わり
最後にキャラクターの話をしたい。
実はこのゲームに登場するドンキーコングは、2代目であることはご存じだろうか?
初代ドンキーコングは、クランキーコングという説教爺さんである。
OPではクランキーが、初代ドンキーコングの舞台であった鉄骨で、レトロなレコードを聴いている場面から始まる。
そして突如上から降ってきた2代目ドンキーが、ラジカセと共に登場し、舞台もジャングルへと切り替わる。
キャラ・舞台・ミュージックプレーヤーが瞬く間に新しいものに切り替わることで、ドンキーコングが代替わりしたことを鮮烈にアピールしている。
キャラクターの魅力を語るうえではドンキーとディディーのゲーム中のモーションも見逃せないポイントだ。
崖から落ちそうなところに立つと驚いて目が飛び出したり、放置してるとドンキーがドラミングしたり。
そういう細かなアニメーションも、それまでのSFCの2Dアクションとは異なっていた。
このスーパードンキーコングは、まさに新世代のゲームだった。
レア社は、日本にはなかった発想を多く持ち込んでくれた。
今ではレトロな存在になってしまったが、Switch版で初めて遊ぶ人がどのようなリアクションを取るのか楽しみだね。
スーパードンキーコングの回顧録まとめ
- ビジュアルは絵画のように美しく、当時は衝撃だった。
- 鬼のように難しい。
- ビジュアルにこだわり過ぎて、アクションゲームとして見辛いなどの欠点がある。
- ドンキーコングが代替わりし、新世代のゲームであることをアピールした。