白き鋼鉄のX(イクス)レビュー
"2DアクションのX(きょくげん)を、見せてやる"と大きく出たゲーム。
そんな白き鋼鉄のX(イクス)を端的に評価するならば……
- スピーディ。
- ヘンな操作感。
- でも慣れると楽しい。
- 憂鬱で激重なストーリー。
- ちょっと簡単過ぎるステージ。
- それを補うために設定されたスコア・タイムアタック。
- 令和におけるロックマンシリーズの進化形。
- ヒロインの歌がいい。
- ダブルヒロインがどちらもかわいい。
- 硬派に見せかけて、女の子の露出の高さも売りの一つ。
私は、「白き鋼鉄のX(イクス)」(以下イクス)というゲームを評価するのは、非常に難しいと感じている。
そして人にススメるには、さらに難しい。なんと言葉を選べばいいか……
イクスを作ったのは、2Dアクションが好きで好きでたまらない人達、ゲーム業界の頑固職人、インティ・クリエイツだ。
これは蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルトのスピンオフで、副社長がガンヴォルトの続編を作らないから外伝を作ろうという社長の意向で生まれた。
参照:https://www.gamespark.jp/article/2019/08/16/92168.html
2Dアクションの"お約束"を見直すところから出発したイクス
2Dアクションゲームでは、数々の"お約束"が存在する。その一つが、「敵にぶつかるとダメージを受ける」というもの。
これは、マリオだろうとロックマンだろうと、今まで当たり前とされてきた。
イクスは、思い切ってそこに踏み込んだ。
「ぶつかって自分だけダメージを受けるのはおかしい、敵にダメージを与えられてもいい」と。
これまでの2Dアクションでは、屈強な主人公が小さな敵に当たった時ですら、大げさに痛がっていた。ネイマールみたいにね。
超人的な跳躍力を誇るマリオさんですら、なぜかクリボーに触れて即死してしまう。
ゲームの仕様とはいえ、その様子は滑稽な笑いどころでもあった。
インティ・クリエイツは、主人公がクリボーやメットールごときの体当たりでダメージを受ける現状を変えたかった。
主人公は強くなければーー。
中学2年生のメンタルを持った會津社長や開発陣が思い悩んだ結果、イクス特有の「ダッシュ体当たりで敵をマーキングし、必中の通常ショットを連射する」という独特なアクションが生まれたのだ。
インティ・クリエイツは、ガンヴォルトシリーズで「通常時に敵やその攻撃を被弾してもダメージを受けない」という大胆な斬りこみで2Dアクションを進化させた。
さらにその外伝イクスで、インティはさらなる進化の可能性を追い求めた。
アキュラのようなカッコイイ主人公が、ザコ敵にぶつかったくらいで、痛がるはずないだろ!
またダメージ無効、ランダム復活&強化で「強い主人公」像を強調しながらプレイヤーを救う要素もある。
これはガンヴォルトで既に実装されていたことではあるが。
ベースはロックマン
イクスは明らかにロックマンの意志を継いだゲームだと言える。
ステージ選択制、ボスから武器を奪える、弱点を突いて攻撃。
さらにダッシュ・空中ダッシュ・壁蹴りといったアクションや、硬派なストーリーはロックマンXから受け継いでいる。
イクスは、それらに加え、令和向けによりスピーディなアクションと、サクサククリアできる易しさ(優しさ)を搭載した。
昭和末期からスタートしたロックマンシリーズの一つの進化形が、令和に登場したと言える。
少しボリュームが足りない
さて冒頭の話に戻るが、イクスは手放しで素晴らしいと言えるゲームかというと、なんとも言い難い。
インティが今年出したブラスターマスターゼロ2は、明らかに素晴らしいゲームだった。1000円とは思えないボリュームだった。
だが、2000円のイクスは?ちょっとボリュームが物足りない。
主人公が強すぎるが故、ステージが簡単すぎるのだ。
特に難しいトラップもなく、簡単にボスまでたどり着ける。
ボスも、ラスボス以外はあまり強いとは言えない。ゴリ押しで、どうにかなってしまうからね。
もしミスをしても、ランダム復活と強化があれば、まず負けはない。ラスボス以外は。
初心者に優しいと言えばそうなのかもしれないが、正直な所、ゲームを始めたての人間が触るゲームではなかろう。
私の知り合いの小学生にこのゲームのことを聞いても、誰も知らなかった。
悲しいかな、ロックマンですらほとんど知らない世代の子たちだから、しょうがないのだがね。
イクスは、スピーディなアクションを売りにしたゲームだ。
だから素早い攻略が可能で、だいぶサクッとラストまで行ける。
故に「時間あたりのコストが高い」と感じてしまう。
例えば、貴方が電車マニアで、新幹線に乗る時間を楽しみたいと思っても、降りる時間はすぐにやってきてしまう。
鈍行の方がより安く、長い時間電車を楽しむことができる。
この点の解決策として、昭和の頑固職人たちであるインティ・クリエイツは、割と簡単なイクスのゲームバランスを保つために、"昔ながらの方法"を導入した。
それはスコアアタックとタイムアタックだ。平成生まれの人間で、2Dアクションのタイムアタックに興奮を覚える人間など稀だろう。
彼らはそんな時間があったら、グラブルの古戦場とやらを夢中でやってる。
令和生まれにはまた流行るかも、そんな淡い期待をインティは夢見ているのかもしれない。
重いストーリー
イクスは必ずしも明るく楽しい冒険譚ではない。
平成仮面ライダーが好きな人にはオススメできるかもしれないが、安易にはおすすめできない、重苦しいストーリーがある。
まあ、この辺は前作を遊ぶとなおよい。
実は際どい衣装の女の子もセールスポイント
アンバランスといえばグラフィックもそうだ。
イラストは高解像度対応できめ細やかなのに、メインのアクションパートでは、キャラが昔ながらのドット絵。
ピクセルアートが絶滅寸前の現代ゲーム業界においては、相変わらず素晴らしいグラフィックなのだ。それはわかる。
しかしここまで今どきのアニメのような世界観にするのなら、今作はグラフィックも「シャンティー」のような、アニメライクなものを見たかった。コラボしていたし。
また本作では、露出度の高いヒロインたちも見どころの一つである。
本作がもっとメジャーならばポリティカル・コレクトネスにサンドバッグにされていたかもしれない。内緒にしといてくれ。
お腹丸出しのヒロイン、コハク。彼女は体調が悪かろうが、決してこのファッションを崩しはしない。
ただでさえ露出度がすごいが、DLCでこの衣装がボロボロに破れる。
閃乱カグラに似たゲームだと思われても仕方がない。
正妻枠RoRo(ロロ)。太ももが強烈だ。
様々な歌謡で楽しませてくれる。もっとも、下手くそプレイヤーは曲を一種類しか聞けないが……。
この子も、前作よりも露出がパワーアップした形態が登場した。
しかし人気投票で選ばれた1番人気キャラはヒロイン2人ではなく、イソラだった。6ボスの1人でアイドルだったりする。
手厳しい女監視官か、と見せかけて実はきゃぴきゃぴしたアイドル 、そんなギャップにKOされたおじさんがたくさんプレイしていることを感じさせる。
白き鋼鉄のX(イクス)についてまとめ
現代にはたくさんの、最新の技術が詰まった魅力的なゲームが溢れている。
グラフィック、3DCGは美麗に進化し、リアルなものやアニメよりのもの、いずれも美しいビジュアルのゲームばかりである。
一方で、くだらないソシャゲも蔓延している。それらは、キャラクターを人質にしてガチャを回させ、お金を搾取することばかり考えている。
インティ・クリエイツは、その時代の潮流のどちらにも迎合することはない。
彼らは令和においてなお、昭和のゲームの伝統を守る頑固職人集団であり、あえて時代に反逆することを選んだ人達だ。
そして白き鋼鉄のXというゲームは、どうしようもないくらい、2Dアクションが好きすぎてたまらない人間が作ったゲームである。
おそらく四六時中、2Dアクションのことばかり考え、ご飯やトイレの時も落ち着かない人たちのはずである。Switch版なら、トイレでもプレイできるからね。
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