異様な雰囲気で発売を迎える、ポケモンソードシールド
リストラ、リストラ、リストラ……。ネット上ではそんなネガティヴなワードが連呼され、今までにない雰囲気で発売を迎えるポケモンソード・シールド。
ネガティヴな話題には、もううんざりしていることだろう。
それに、皆さん感情的になってしまい、イマイチ「登場ポケモンを絞ったこと」のメリット・デメリットを把握していないのではないだろうか。
そこで今回は、同じく「過去作のキャラを絞った」プリキュア春映画と比較しつつ、冷静に、その強みと弱みを比較していきたい。
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既にご存知の通り、ポケモンソードシールド(以下、剣盾)では、多くの既存ポケモンが登場しないことになった。
ネットではこれを「リストラ」だと言われている。
正確には違う。リストラというのは二度と登場させてもらえない場合に使う言葉である。
別に剣盾で出ないからと言って、アニメにも出るし、GOにも出る。
「登場ポケモンを絞った」というのが正しい。
これはプリキュアの春映画が「オールスターズ」を辞めたようなものだ。
プリキュアシリーズの春映画は、かつてプリキュアオールスターズとして、2009年から2016年まで、毎年春に公開されていた。
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しかし、プリキュアが50人を超える規模になってくると、さすがに東映アニメも限界を感じ、2017年からは「3世代のみ」の映画になった。
ポケモンも似た状況だ。
ゲーフリは、いよいよ1000種類近い規模になってきたポケモン達を、最新グラフィックで毎作出し続けるのは限界と感じ、剣盾で一旦区切りをつけることとした。
ともに”毎回”オールスター商法は、リミットいっぱいに達していた。
だからそれぞれ、オールスター商法を一旦辞めることにした。
それではオールスター商法を先に辞めた先輩であるプリキュアの例をもとに、ポケモンというコンテンツが、「出るポケモンを絞った」ことでどのようなメリット・デメリットがあるのか、考察していく。
オールスター商法をやめるメリット
新しいポケモンの存在感が増す
これが最大の利点である。
プリキュアオールスターズでは、過去作のプリキュアの活躍シーンを増やした結果、最新のプリキュアが空気のようになったことがあった。
数が多すぎたのだ。
かといって、新人を活躍させてしまえば、今度は過去作のキャラが、申し訳程度の出番になってしまう。一瞬映ればいいというレベルだった。
そこでプリキュアではオールスターズをやめ。新プリキュア+前作+前々作という構成に変更した。
実のある出番をあげられないなら、いっそ出さない方が良いという考えだ。
もちろん賛否はあったが、ここまでは映像のクオリティも高く、登場するプリキュアにそれぞれに見せ場があり、まずまずの出来栄えになった。(今年の春は少し微妙だったが……)
これがポケモンになると、新ポケモン+過去作のポケモンの4割程度という感じになる。
アローラでは、新ポケモンは全体の8分の1程度だったが、ガラルでは新ポケモンは、5分の1か4分の1程度になる見込みだ。
それなりにバトルでも存在感を発揮できそうだ。
1体1体のポケモンに懸けられるリソースが増える
全てのキャラを登場させるのは確かに理想ではある。
が、年々キャラが増えるが、納期は変わらず、作業時間は限られている。人的資源、予算にも限界がある。
それでいてプリキュアでもポケモンでも、3DCGモデルの要求レベルが上がり、ブラッシュアップするのにも一苦労だ。
テクスチャを調整し、自然なアニメっぽく見せなければならない。
無論、ビジュアルの向上はキャラクターのCGのみではない。
クオリティを向上するために、どこかを削らなくてはならなかった。
実際プリキュアでもポケモンでも、数を絞ることによって、ビジュアルが大幅に向上した。
プリキュアで言えばドリームスターズ、ポケモンで言えば剣盾が該当する。
これは登場キャラを絞った利点の一つである。
今まで活躍のなかったポケモンにスポットが当たる
プリキュアドリームスターズが無ければ、ゆいちゃんがあきらさんに壁ドンされることもなかった。
数を絞ることで、意外なキャラにスポットが当たることになるかもしれない。
ポケモンでは、例えばフライゴンだ。
彼はこれまでガブリアス達の劣化だと称され、ずっと揶揄されつづけてきた。ガブリアスやランドロスなどが出ないであろう剣盾で、フライゴンは初めて、まっとうな戦いのステージに上がることを許されるのかも。
制作スタッフの過重労働が避けられる
見えない制作スタッフのことなど、どうでもいいと考えている人もいるかもしれない。
しかし心優しい読者の皆さんは、そうではないと信じている。
アニメやゲーム制作は長時間労働が当たり前?制作スタッフが徹夜し、会社に泊まるのは普通?
いや、その前時代的な働き方は、そろそろ改革せねばならない。
それが理解してもらえないのならば、誰にもブラック労働を批判することはできず、ただ受け入れるしかない。
オールスター商法をやめるデメリット
では一方で、悪い点についても考察しよう。
出ないポケモンが忘れられる
最も悲しいデメリットがコレだ。
プリキュアオールスターズでいえば、私は毎年何人かの推し、例えばキュアダイヤモンドやキュアマリンが出るのを楽しみにしていた。
が、それも2017年以降、全くでなくなったのは、なんとも言えない悲しみに包まれた。
おそらく今の幼女先輩は、キュアマリンもキュアパッションも知らないだろう。親が熱心に過去作を見せでもしなければ……。
それは仕方のないことなのかもしれない。
そして時が経つにつれ、自分自身ですら、「キャラへの好きという気持ちが、以前ほど強くないのかもしれない」と思うとさらに寂しい。
これも仕方のないことだ。
人はずっと昔と同じでいることはできない。ただ寂しいという気持ちがあるだけだ。
ポケモンでも、同じことが起きるだろう。
歴戦のトレーナーたちの中でも、ガブリアスが記憶の中の存在となり忘れられてしまうかもしれない。
最近の小学生男子はフォートナイトに夢中だし、ポケモン自体が忘れられないかも、心配だ。
ファンの反感を買う
「もうすでに起きていることだが」と、前置きしておこう。
やはり長く続いているコンテンツというのは、ファンのキャラクター愛が強く、それによって土台が支えられている。
毎回、自分の好きなキャラが出るのが当たり前、と思っていたファンが、自分の好きなキャラが出ない、というのを知った時の落胆は大きいものだ。
それで離れてしまう人がいるというのも、仕方がないことであろう。
プリキュアオールスターズでは数十人のプリキュアに対するファンが涙を飲んだが、ポケモンでは数百種に対するファンが、悲しい気持ちに包まれることになる。
商業的に、「完全なオールスター」に勝てない
プリキュアも完全にオールスター商法を辞めたわけではない。
2018年秋の映画では、突如オールスターズが復活し、ファンを驚かせた。
どうやら、15周年などの節目では、今後もオールスターズが登場する計画のようだ。
結果、その復活したオールスターズは、売り上げにおいて圧倒的な成功を収め、これまでにない興行収入を記録した。
全キャストが揃い、全キャラにセリフ有りというのも効果絶大だった。そして55人のプリキュアが一堂に会した3DCGダンスは、圧巻で、ビジュアルのインパクトはすさまじかった。
ポケモンも、今後おそらく「オールスター」的な、過去作のポケモンすべて出ます、という作品は作るであろう。もしかしたらそれは剣盾のマイチェンや続編かもしれないが。
もしそれが完全新作ならば、剣盾よりもセールス面で上回りそうだ、とたやすく予想できる。
ポケモンはあなた達一人一人のもの
ゲーフリはデベロッパーとして、納期とクオリティというギリギリのところで、難しい決断をした。
だが、それは制作側の事情に過ぎない。
最後にこれだけは伝えておきたいが、ポケモンはをどう楽しむかは、あなた方一人一人の自由である。
別に剣盾が、ポケモンのすべてというわけでもない。
不思議なもので、インターネットを見ているとネガティブな話題ばかり目についてしまうだろう。
そしてそれを見て、自分もネガティヴな感情を吐き出し、さらにそれを見た人がネガティヴになる。
ここにたどり着いた人も、そういう体験をした方もいるかもしれない。
でも、そんなものは何も気にする必要がない。
本当のポケモンは、SNSや匿名掲示板にはない。あなたの手の中にあるはずだ。
もっと自由な心で、自分自身の目で、今のポケモンを確かめるべきなのだ。
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