スカイリムで思い出すのは――
暗く、雪だらけで似たり寄ったりの景観。
時折やってくる残虐なイベント。
主人公に対してひどく冷たい人々。
悉くブサイクな登場キャラクター。
どこに行っても同じようなモンスター。
茶番のような殴り合い。
調子の外れた吟遊詩人。
わけのわからない誤訳。
おまけに笑えるバグだらけ。
スカイリムの悪い点を探せば枚挙にいとまがない。
ではこのゲームはどうしようもなく退屈でひどいのか?
その答えは“NO”だ。
The Elder Scrolls V: Skyrim | Nintendo Switch | ベセスダ・ソフトワークス
スカイリムは何が面白いのか。
ニンテンドースイッチでスカイリムが発売されるので、私がPC版を遊んだ時の思い出を話そう。
スカイリムは開始して1時間以内は、ひどく退屈なゲームに思える。
何故かいきなり処刑されることになっていて、ドラゴンがやってくる。
知らないオッさんに助けられ、わけが分からないうちに逃走していると、最初の村にやってくる。
目的地をはっきり提示してくれるRPGに慣れている人は、もう何が何だか分からなくなり、ここで飽きるだろう。
私もそうだった。
加えて私は、そこら辺で偶然入った洞窟が、あまりにもホラーで、その不気味さからしばらくプレイを避けていた。
そんな私が面白さに気づいたのは、間を開けて2回目にプレイしてグラフィックにも慣れてきてからだった。
スカイリムは現実世界の巨大なミニチュア
スカイリムでは、現実世界と同じように人々が主人公の知らないところで、毎日の暮らしを送っている。
薪を割る人もいれば、商いをする人もいる、宿屋を営む人もたまに留守にして買い出しに出かけたりもするし、盗っ人も山賊もいる、それを取り締まる衛兵もいる。
中には、主人公が知らぬ間に死んでしまうNPCもいる。
そう、スカイリムとは現実世界の縮小版なのだ。
そしてこの世界では、あなたは選ばれし者として特別な存在だ。
ただ何も勇者として生きなくてもいい。職業選択も自由だ。
自由であることがとても大事なことで、喜びなのだ。
魔法使い、戦士、盗賊、鍛治職人、暗殺者……。何か一つを極めてもいいし、あれもこれも欲張ることもできる。(効率は前者の方がいいが)
そしてストーリーに沿って進む必要すらない。本当の自由というのは、自分で決めて自分で進んでいくものだ。
これまで典型的なJRPGしかやったことがない人は、RPGとはアニメや映画のようにあらかじめ用意されたストーリーをなぞっていくものだとイメージしているだろう。
スカイリムが何もかも完全な自由を手に入れられるRPGだ、とは言わない。このゲームの欠点は冒頭で散々述べた通り。
ただ日本製のRPGしか遊んだことがない人には、こういう形のRPGもあるのだと知って欲しいのだ。
そしてスカイリムには数えきれない程のクエスト (事件と呼んでもよい)と、読み切れないほどの書物がある。
これらが、スカイリムの「現実世界のミニチュア感」を高めてくれている。
その膨大な量には、あなたもきっと驚くことだろう。さらに一度その魅力に気づいたら、中々飽きることはない。
「お前はスカイリムとその民に対して罪を犯した。何か釈明はあるか?」
スカイリムでは、主人公はスリ、盗み、暴力、殺人などさまざまな犯罪を行うこともできる 。
主人公が世界を救う正義の味方であるJRPGを多く遊んでいた私にとっては、かなりのカルチャーショックであった。
まずこのスカイリム内で可能な犯罪行為一覧を見てみるのもいいだろう。
犯罪 - Xbox360/PlayStation3「The Elder Scrolls V:SKYRIM」日本語版wiki - アットウィキ
(以下はすべてゲームの話であるので、現実では絶対やらないように)
私は自分自身が善良な人間であると信じているが、ゲーム内で人を攻撃した時の背徳的な感覚は忘れられない。
最初はちょっと軽い気持ちで店の品を盗んだ、あるいは偶然盗んでしまったことだったと思う。(このゲームではボタンの押し間違いで盗んでしまうことがしばしば起きる)
そうしたら店員が全力で殺しに来るので、ついつい反撃して死なせてしまったのだ。
その時私は仮面ライダービルド21話の主人公戦兎のように、「こんなつもりじゃなかった」という気持ちになった。
か、どうかは忘れた。
むしろ殺害した村人からアイテムを奪えると知った私は非常に好戦的になり、積極的に戦うようになった。
だが、殺害した村人が復活することがないと知ってからは、非常に後悔の念につつまれ、それまでの行いを反省した。
代わりに、盗みをよく働くようになった。
日本のRPGでは、住人の目の前でタンスや壺から金品を頂戴しても、誰も怒りもしない。
しかしこのゲームは住民が怒って武器で攻撃してくるか、衛兵を呼ばれて拘束されるかになる。もちろん、衛兵を倒すこともできる。
序盤だとかなり強いが、衛兵は村人と違いいくらでも湧いて出てくるので、あまり罪悪感がない。
さらに捕まって牢屋に入れられても、そこから脱獄することもできるのだ。日本のゲームにこんなものがあるだろうか?
残念ながらない。
笑えるバグの例
私が遭遇したバグを挙げよう。
あるサイドストーリーで、宝物庫の宝が盗まれたんじゃないかという話になった。
「そんなはずはない、我々が持っている2つの鍵が無ければ開かないんだ!開けて確かめてみよう!」と言うオジさん。
しかしこの時、私は笑いをこらえていた。何故なら宝物庫の扉が既に全開になっていたからだ。もちろん宝などない。
その後、オジさん達は開いているドアに向かって鍵を使うような仕草をすると、「なんてこった!宝が全て盗まれてるぞ!」と大騒ぎ。
彼らには安全安心のアルソックを配備しても、すべて無駄になるに違いない。
その他にも、地面にアイテムを落としまくったら、処理落ちで床が消えたとか。
クエストの手順を間違えたら進行不能なバグになることも割とある。
何故なら、さまざまな出来事やシステムが複雑に絡み合うゲームだから、バグの多くは把握できていないのだ。
つまりは、バグはつきものだと笑って構えていた方がいい。進行不能なバグに捕まったら、すぐさまクイックセーブをロードしよう。
まとめ
- スカイリムは、直ちに面白さが分からないかもしれない。
- スカイリムは現実世界の巨大なミニチュアで、プレイヤーはそこで自由を手に入れられる。
- 日本製のRPGでは考えられないような犯罪プレイもできる。
- 笑えるバグもあるが、手に負えないバグも多く存在する。すぐ直前のセーブをロードしよう。
こんなスカイリムがニンテンドースイッチで携帯機としても遊べるようになった"未来"が2018年だ。ハイスペックPCの前に腰掛ける必要などない。お手軽なスイッチで寝転がりながら初見プレイできる貴方は、幸せ者に違いない。