「ピカブイの対戦環境は持ち物も無く、特性も無い。つまらない」
現代っ子達はそう口を揃えるが、原始人にとっては懐かしの環境に近づいている。
遥か遠い遠い昔、人間がまだ石器で生活していた1997年頃、誰もが認める最強のポケモンがいた。
そう、レベル55のケンタロスだ。
今日は「ケンタロス?孵化用の乗り物だろ?」という現代っ子達のために、昔のケンタロスがいかにすごかったか教えよう。
ケンタロスの種族値は
ケンタロス種族値:H75-A100-B95-C40-D70-S110 計490
S110という速さ、A100で火力も高く、サブウェポンも物理特殊ともにドラえもんの秘密道具並みに種類が豊富だった。当時は努力値510制限がなかったので、耐久だってあった。
ん?S110はそこまで速くない?A100も大した火力じゃない?
これだから現代っ子は贅沢でいかん。当時、S130族はミュウツーを除けばサンダースとプテラしかいなかったし、他にS110族より早いとなるとフーディンやスターミー、マルマイン、ダグトリオくらいだった。
ちなみに同速にゲンガーがいた。今挙げたポケモンは、プテラ以外はみんな環境のトップに立っていたポケモン達だ。
A100は確かに、そんなに高くもない気がするが、相対的な理由で高かったのだ。
物理アタッカー不遇の時代
第1世代当時、物理アタッカーはろくなポケモンがいなかった。とにかく一致技を覚えなかった。
最大の攻撃種族値134を誇っていたカイリューは「しんそく」も「げきりん」も「ドラゴンクロー」も存在していなかったので、実質ケンタロスよりAが低かった。
他のA130族はどうだったか。
カイリキーは威力80命中80で反動技の「じごくぐるま」が最大火力で、サブウェポンにも恵まれずSも低いためエスパー環境に入り込む余地はなかった。
キングラーやブースターなどはもっと悲惨で、水タイプ、炎タイプは特殊技固定と決められていたので、タイプ一致物理技なんてものが存在しなかったのだ。A130族なのにだ。イジメとしか云う他はない。
他にもカイロスやサワムラーやウインディなど、ケンタロスよりAが高いポケモンはいたが、みんな同じようなものだった。
ギャラドス?あいつは特殊アタッカーだったよ。
そんな中、ケンタロスはA100以上で一致技にも恵まれた唯一の物理アタッカーと言っていいほどだった。
エスパー最強で格闘タイプも不遇の時代
格闘タイプが不遇だったことも、ケンタロスにとっては追い風だった。
エスパータイプが最強と言われていた。素早さが高くて特殊火力もあり、悪タイプは存在せず無効にされるタイプもなかった。
フーディンやスターミー、スリーパーやナッシーですら強いとされていたのだ。
エスパーに強いとされていた虫タイプは、本当に技がザコだった。
「ミサイルばり」(当時1発の威力15)と「ダブルニードル」(威力25×2、スピアーの専用技)しか存在しなかった。
また、エスパーのもう1つの弱点であるゴーストタイプ唯一の攻撃技は「したでなめる」だったのだが、バグだか仕様だかで、エスパーには無効だったのだ。
まあ、効いたところで威力20の技など何にもならないけどね。
だからエスパータイプには弱点など存在しなかった。
そんな時代だから、エスパーに弱い格闘・毒タイプは環境に身を置くことを許されなかった。
つまり格闘弱点のノーマル単タイプ、ケンタロスやカビゴンも、実質弱点はないものだった。
ケンタロスのメインウェポン
当時は物理アタッカーにとって深刻な技不足の時代だったことは、もうお伝えした。
その点ケンタロスはと言うと、タイプ一致物理技はまず「のしかかり」があった。命中100威力85と安定でさらに追加効果で3割まひの技だ。この技はかなり強く、当時はラプラスですら使っていた。
なんせまひは2分の1で行動不能だったからね。
そしてなんと言っても必殺の「はかいこうせん」があった。威力150の一致“物理技”だ。これがまたふざけた技で、相手を倒した次のターンは反動が無くなるという代物だった。現代で言ったら、Zワザが連続で撃てるようなものだった。
こだわりハチマキも命の珠も無かった時代の話である。
豊富なサブウェポン
唯一ノーマル技無効のゲンガーには「じしん」で抜群がとれた。半減の岩タイプであるゴローニャにも同様だ。
また特殊技の「ふぶき」が鬼だった。
当時「ふぶき」は追加効果のこおりが3割で、こおりからは回復手段が一切なかった。こおりになったら、もう完全に戦闘不能だった。
つまり「ふぶき」は外れても相手にダメージがある一撃技のようなものだった。「ねっとう」のやけどなんか目じゃない。
あとは「10まんボルト」も、パルシェンやギャラドスを意識して採用されることもあった。
ピカブイでケンタロスが復権か?
知っての通り、ピカブイには初代のポケモン151種+メルタン、メルメタル、そしてアローラの姿のポケモンしかいない。
しかも持ち物と特性も存在しない。
これは初代の環境に近い。ケンタロスにとっては復権のチャンスだ。
だいぶ前の話になるが、ORASの末期に「カントークラシック」という公式大会があった。
使用可能ポケモンはミュウツー、ミュウ以外のカントーポケモン。
持ち物なし、シングル6:6で戦うルールだった。
その時、私はこんなPTで参加した。
トップメタのカイリューを自由にさせないため、全員がカイリューの弱点技を採用していた対面重視の構築だった。
それ故ケンタロスも「げきりん」を採用していた。まあ意外と刺さった気がする。
ゲンガーを迎え撃つためだけに「しねんのずつき」を採用していた。確1は取れなかったけどね。
さて、さぞ皆がケンタロスを使ったのだろう、と当時の大会ページを見てみると……。
上位30位までにケンタロスがいなかった!
いや、おかしいぞ。メガシンカしないガルーラですら25位に入っているのにな。
素ガルーラ対ケンタロスならSもAもケンタロスの方が上だし、特性はいかくなのにな。みんな見る目がなかった。
ではピカブイではどうか。
一応ピカブイには”親子愛を無くした”メガガルーラが存在する。そいつに比べればケンタロスはSでは勝ってるんだが、S以外は全部負けてる。
せめて「いかく」があればダブルバトルでは生き残れた可能性もあるが、いかんせん厳しい。
私は素直な人間なので、皆さんに、この記事タイトルを訂正したい。
どうも、ピカブイでもケンタロスの時代が帰ってくることはなさそうだ、とね。
ただ、頂点には立てないかもしれないが、S110という速さは、ピカブイ環境ではかなりの武器になるはず。それだけは嘘ではない。
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