ポケモン公式が、実に風情のあるマーケティングをしたので、記録に残しておきたい。
言い換えれば、狂気的でもあるし、究極の焦らし商法とも言える。
それはポケモンライブカメラとかいうやつで、ガラル地方の森を24時間定点観測するという、映像コンテンツであった。
ポケモンライブカメラでエンターテイメントなのか?新情報なのか?
そう期待した人たちは、涼宮ハルヒのエンドレスエイトを見ている気持ちになっただろう。
平安時代の貴族達なら、これを1日中楽しんで眺めているに違いない。
しかしながら、時は令和時代。
見ている人は忙しい社会人か、1秒でも退屈に耐えられない児童しかいない。
これをずっと見続けている令和人は真に我慢強いポケモンファンか、睡眠導入動画として見ている人だけだ。ポケモンスリープを先取りしているのかもしれない。
出てくるポケモンは1時間に1体くらいで、映画のようなエンターテイメントを期待していたユーザーには、期待はずれだったようだ。
実は24時間で出た新ポケモンは1種のみ
このような催しを開催して、実は完全に新規のポケモンは一種だけだった。
それはポニータ(ガラルのすがた)である。
#ポケモンライブカメラ
数時間に一度だけ、何度か体の一部やうすぼんやりとした姿で登場しては、見ている者をやきもきさせた。
#ポケモンライブカメラ
日本では未発表だったベロバーというポケモンも、幾度となく登場した。
他にはピカチュウや、ボクレーなどが少し出た。
それも1時間に1度、出るか出ないかという頻度だ。
信じられないかもしれないが、あとはひたすら森の音を聞いて、木と草とキノコを眺める時間だった。
ポケモンライブカメラで体験できたもの
このライブ配信では、動物学者の気持ちが味わえる。
出会えるかどうかもわからないポケモン達を、辛抱強く待ち続けなければならない。
将来、フィールドワークを中心とした学者を目指す人は、良い体験ができたかもしれない。
もっとも、徒労に終わるだけのリアルとは違い、結局は見続けた物に成果(新ポケモン)が得られるということになった。
一日中、庭を眺めて過ごした奈良や平安時代の貴族気分も味わえた。
夜もすがら独りみ山のまきの葉にくもるもすめる有明の月
――鴨長明「新古今和歌集」
そんな現代人には考えられぬ、ゆるい時間だった。
本当の狙いはSNSマーケティング
ポケモンライブカメラは粘り強い人だけが見続け、退屈だと感じた人たちは早々に視聴を辞めた。
最初は3万人見ていたが深夜帯では数千人に減った。
ゲーフリや任天堂は、それぞれの立場の人が、次にどう行動するのか、しっかり予見していた。
つまりSNSだ。
ポケモンライブカメラを粘り強く見た人たちはSNSで拡散し、退屈だと感じた人たちはSNSに即効性の情報を求めた。
そして配信終了後はアーカイブも残っていないので、何があったのか後から知りたくなった人は、今このブログ等をご覧になっているというわけだ。
ネギガナイトの記事でも書いたが、ポケモン公式は本当にSNSを使ったPRが上手くなった。
こんな退屈そうなストリームでも結局は、SNSで「こんなポケモンがいた!」「ガラルポニータだ!」と拡散してもらうことに成功した。
配信中は「ガラルポニータ」がTwitterのトレンド入りを果たした。
たった1種のポケモンを公開するために、大掛かりな催し物を敢行したのである。
ポケモン公式は、3年前からは考えられぬほど、PRがうまくなったし、熱心になった。動画サイトやSNSの重要性を、よく理解するようになった。
これがゲーム本編の充実につながるかは分からないが、ここまでは上手くやっている。
発売日当日まで、期待して待ちたい所だ。