「懐かしさ」に訴えかけられると人は弱い
マリオオデッセイ、なかなか良いゲームだった。
私の中では最高のマリオ、とまではまだ判断できないでいる。サンシャインやギャラクシーを超えた、かどうかは少し微妙だ。
だがラストの展開の熱さはマリオ史上随一だった。
さて、そんなわけで冒険もひと段落かと思いきや、ストーリー上のエンディング後に行けるマップがこれまたすごいところだった。
以下ネタバレ注意
クリア後に用意されていたのは「過去への旅」だった
スーパーマリオ64の舞台になった場所にマリオが22年ぶりに帰ってきた。
そう、ここはキノコ王国のピーチ城だ。
ただ帰ってきただけでなく、当時の64の頃のマリオの姿になることもできる。あるキノピオは「なにもかも懐かしい姿」と言っているが、それはプレイヤーも同じ気持ちだ。
哀愁に訴えるのは非常に冴えたやりかただ。思い出というものが美化されているとは薄々気づいてはいるのだが、戻れない過去への追憶はなんとも心を揺さぶられる。
そんな美しい思い出の世界へ、簡単に連れて行ってくれるのが、マリオオデッセイのクリア後のご褒美なのだ。
ここピーチ城では、ローカルコインは64の時のパワーコインだし、屋根の上にヨッシーがいたり、お堀の水を抜けたりする。流石に64の各ステージは再現されていないが、壁に飾ってある絵の中にだって入れる。
おまけにパワームーンがどこからどう見てもパワースターであり、獲得した時の軽快なSEも当時と同じだ。「ヒャッホー」というマリオの掛け声が無いのだけが残念だが。
これで懐かしい気持ちにならない人などいないだろう。
ファミコン時代のマリオでも懐かしい気持ちに。世代じゃないけど
懐かしい、といえばマリオ64だけじゃない。今作のマリオは随所でファミコン風のペラペラになる。
都市の国では、ファミコンのスーパーマリオブラザーズのロゴから1-1面にそっくりな、不思議な映画名の中に入り込むこともできる。大勢の観客に見守られながらオールドスタイルのマリオをプレイするのは何とも緊張した。
本当に初代のマリオ、ドンキーコング要素もある。初代ヒロインのポリーン(正確にはポリーンという名になったのはドンキーコングGBからだが)が登場し、市長となっている。彼女は華麗な歌声も披露し、この作品の陰のヒロインである。
なお肝心のドンキーコングは、こんな出演。
私は、マリオオデッセイは斬新なゲームだとは思わない
憑依システムも、ものすごく新鮮かというとそうでもない。カービィのコピー能力をより機能的にしただけだ。オシャレさ・かわいさでは、カービィには及ばない。所詮はヒゲのおっさんだ。
ではこのゲームはただの懐古趣味なのだろうか。
それも違う。
マリオオデッセイには、「過去に目を閉ざす者は、現在に対しても盲目となる」というドイツの政治家の格言が似合う。
マリオオデッセイは過去に目を向けることにより、今を生きているゲームだ。
32年分、過去のマリオの要素を「オシャレなパーツ」として取り入れ、着飾っているのだ。そしてこれが今の新しいマリオのファッションですよと、プレイヤーに呼びかけている。
ファッション界でしばしば言われる、一周回って逆にオシャレというやつだ。
最新の美麗なCGで描かれたマリオが、昔懐かしのギザギザドットになったり、64のカクカクポリゴンになったりする。このショボいともいえるグラフィックが、逆にオシャレ。
私はマリオオデッセイが斬新なゲームだとは確かに思わない。
だがそれでも「このゲームは今の時代を生きている」と感じた芸術的シーンがいくつかあった。
その美しさを言葉で語っても無粋だ。
いくつかのスナップショットで、このゲームの今を紹介し、この記事を終わりにしよう。