ポケモンワールドチャンピオンシップス(WCS)2017のニコニコ生放送配信を見ての、試合の詳報をお伝えする。
念のため、筆者はJCSの時とは違って、現地カリフォルニアには行ってないので誤解無きよう。
↓JCSの時の記事。
Day1
Day1はスイスドロー方式の7回戦。勝ち抜けのボーダーラインは5勝2敗で、それ以下の場合は敗退。
各国の予選上位の強者ぞろいの中、勝ち上がるのは至難の業である。
スイスドロー・第1ラウンド
ビエラ VS SNOW
初戦から2015年の世界王者ビエラ氏とSNOW氏の日本人対決になった。
ビエラ氏PT
出典:「ポケモンワールドチャンピオンシップス2017」Day1 - 2017/08/19 00:30開始 - ニコニコ生放送
- カプ・コケコ
- ウインディ
- カイリュー
- カミツルギ
- ギガイアス
- ルガルガン
SNOW氏PT
出典:「ポケモンワールドチャンピオンシップス2017」Day1 - 2017/08/19 00:30開始 - ニコニコ生放送
- ウツロイド
- カプ・コケコ
- ボーマンダ
- メタグロス
- マッシブーン
- トリトドン
1戦目
ビエラ氏 先発 カプ・コケコ、カミツルギ 裏カイリュー、ウインディ
SNOW氏 先発ボーマンダ、ウツロイド 裏メタグロス、不明
SNOW氏の遅く耐久に振っているウツロイドが「トリックルーム」を展開した。そこからメタグロスが暴れ、ワンサイドゲームに。
まずはSNOW氏が元世界王者から先取した。
2戦目
ビエラ氏 先発ギガイアス、カイリュー 裏ウインディ、カプ・コケコ
SNOW氏 先発ボーマンダ、ウツロイド 裏メタグロス、マッシブーン
「トリックルーム」対策にしろいハーブ持ちのギガイアスを先発させ、巻き返しを図ったビエラ氏。
SNOW氏は同じ選出ながら、今度は「トリックルーム」を使わない戦術で翻弄。
2戦目もSNOW氏が制し、ストレート勝ち。
ビエラ氏はPT構築の段階で、不利だった。ギガイアスにトリル対策を一任していたため、弱点保険持ちメタグロスがかなり刺さってしまっていた。
スイスドロー・第7ラウンド
DJ VS Arash
ウインディ・レヒレ・カミツルギ・トゲデマルの並び、通称DJパ(またはAFKパ)の創始者DJ氏と、2013年の世界王者Arash氏の対戦。
互いに4勝2敗同士で、勝った方がDay1を突破という重苦しい雰囲気の試合だった。残念ながら3戦目しか中継されなかったが。
3戦目
DJ氏 先発ウインディ レヒレ 裏トゲデマル カミツルギ
Arash氏 先発ウインディ レヒレ 裏ガブリアス テッカグヤ
ラス1の対面同士、Arash氏のスカーフガブリアスの「じしん」をHPが50ちょっと残っているDJ氏のカミツルギが耐えるか絶えないかという局面で、何とかギリギリで耐え、返しの「リーフブレード」で落として勝利。
海外勢のコケコライチュウピッピカビゴンの流行。
海外勢、というかアメリカではカプ・コケコ、Aライチュウ、ピッピ、カビゴンの並びが共有されていたのかもしれない。
これが中々ユニークなPTだった。コケコライチュウは小学生でも思いつきそうだが、そのサポートにピッピを入れているのが見事な発想だ。
輝石ピッピの特性「フレンドガード」、技「このゆびとまれ」「いやしのはどう」でのサポートが強力で、隣のポケモンを中々落とさせない。カビゴンと並べると特に堅いし、ピッピ自身も輝石なので意外に堅い。
カビゴンがS振りだったりするのも面白い。明確なSラインは分からないが、カビゴンは準速なら4振り60族(ポリゴン2)を抜けるようだ。
そんなこんなで、Day1は終わった。まだ全然書いてない気もするが。
2015年の世界王者、ビエラ氏は2勝3敗で次のラウンドに進めなかった。
生活の変化などがあったにせよ、今年は彼の年ではなかったということだろう。
幸い、今後への意欲もtwitterで発言しているので、来年以降や年末の大会などでの巻き返しに期待だ。
Day2
この日のマスターカテゴリははDay1の生き残りと、シード選手のによるスイスドロー7回戦。勝ち残ったものがベスト16となり、そこからはノックアウト方式のラウンドになった。
スイスドロー勝ち抜けのボーダーラインはまたも5勝2敗で、4勝の場合は、オポネントと敗者復活戦にわずかな望みをたくすしかない。
ちなみに、この日の参加者81人中18人が日本の選手だったらしい。
スペイン人も18人で、日本人と並んで最も多かった。
またDay2に残った参加者の使用ポケモンランキングが公開された。
出典:
- カプ・コケコ 47人
- ウインディ 45人
- カビゴン 29人
- ガブリアス 28人
- カプ・レヒレ 25人
- ポリゴン2 24人
- テッカグヤ 22人
コケコ、ウインディは半分以上のトレーナーが採用している人気ポケモン。テテフは意外にもあんまりいないようだ。
さて、スイスドローが終わり、ベスト16が出そろった辺りからのレポートとなる。
ラウンド16
バルドル氏 VS たき氏
日本人同士の対決。
現日本王者バルドル氏と、ビエラ氏なども推している強者、たき氏。
バルドル氏はDay2からのシードだったが、スイスドローのラウンドでは初戦に敗れ、苦しいスタートから巻き返して勝ち上がってきた。
1戦目
バルドル:先発カプ・レヒレ ワルビアル 裏カプ・コケコ、Aガラガラ
たき:先発カプ・レヒレ ウインディ 裏トゲデマル、バルジーナ
ワルビアルで上手く制圧してバルドル氏の勝ち。ガブリアスに比べると弱いと目されているワルビアルだが、「いかく」持ちという長所を上手く活かせた。
2戦目
バルドル:先発ワルビアル テッカグヤ 裏コケコ レヒレ
たき:先発トゲデマル カミツルギ 裏ウインディ レヒレ
初手ふうせんトゲデマルとカミツルギに対して強気に「じしん」を撃っていったバルドルのワルビアル。これが上手くウインディにヒットし、アドバンテージを取るが、次のターンカミツルギがワルビアルに「リーフブレード」を急所に当てて、状況を五分に戻す。
最後はたき氏のバルジーナが「おいかぜ」+「はねやすめ」で粘り、バルドル氏の珠カプ・コケコを討ち取るという意外な結果に。これで1勝1敗のタイ。
3戦目
バルドル:先発エルフーン レヒレ 裏ワルビアル コケコ
たき:先発バルジーナ カミツルギ 裏ウインディ トゲデマル
「しぜんのちから」エルフーンをここまでとっていたバルドル氏。まずはバルジーナの「ちょうはつ」ですべての技が封じられ、不発に終わったかに見えた。
が、再度出てきたときにエレキフィールド展開からの「しぜんのちから」をZワザで10万ボルトZに変化させ、たき氏のウインディを倒す。
これで流れをつかんだバルドル氏の勝利となった。たき氏は終盤、緊張からか追い風まだ発動中なのに追い風を選んでしまうミスもあったが、大勢はもう決していた。
2勝1敗で、バルドル氏がベスト8に進んだ。
準々決勝
バルドル氏 VS スウェーデンのN.D氏
準決勝は引き続き日本王者バルドル氏と、マーマネ似のスウェーデンの選手の中継。
1戦目
バルドル:先発カプ・レヒレ ワルビアル 裏Aガラガラ テッカグヤ
N.D:先発カプ・コケコ ウツロイド 裏Aペルシアン ウインディ
N.D氏のコケコ、ウツロイドの並びにバルドル氏のレヒレ、カグヤが縛られ、どちらをガラガラと交代させるかという所で、見事読み切ってレヒレを引き、窮地を逃れる。
これが功を奏し、そのままバルドル氏が1本目を取った。
2戦目
バルドル:先発ワルビアル テッカグヤ 裏カプ・コケコ ガラガラ
N.D:先発ミミッキュ Aペルシアン 裏カビゴン ウインディ
トリル展開でND氏がやや主導権を握ったように見えたが、交代読みでカビゴンに「やどりぎのタネ」を入れることに成功したバルドル氏。
さらにトリル下でカビゴンに縛られている状況でありながら、海外勢は「いわなだれ」はないだろうとふんで、強気にカビゴンへの集中攻撃を選択。1本目取っている余裕も、強気につながったようだ。
カビゴンを落とし、結果としてこれが勝因だった。
準決勝
バルドル氏 VS SNOW氏
決勝への切符をかけ、またまた日本人対決。準決勝前にバルドル氏が放送席にワルビアルのぬいぐるみを忘れるハプニングがあったが、スタッフによって無事届けられた。
1戦目
バルドル:先発カプ・レヒレ ワルビアル 裏Aガラガラ テッカグヤ
SNOW:先発ウツロイド メタグロス 裏トリトドン ボーマンダ
お互いにトリトドンとテッカグヤに有効打がなく、それぞれを落とせない長期戦に。
SNOW氏がバルドル氏のテッカグヤ以外のポケモンを撃破するも、メタグロスを倒したことによりビーストブーストで特防が上がったテッカグヤは落とせない。
結果、泥試合になった。テッカグヤ側は1対3という状況にもかかわらず、じわじわと真綿で締め付けるように、「やどりぎのタネ」で侵略。
またラスト1匹しか残ってないので、むしろ選択時間が減り、持ち時間で有利に立つという奇妙な状況に。
2戦目
バルドル:先発カプ・レヒレ ワルビアル 裏テッカグヤ Aガラガラ
SNOW:先発トリトドン ボーマンダ 裏ウツロイド マッシブーン
バルドル氏が前の試合でなかなか抜けなかったトリトドンを早めに倒し有利かと思いきや、最後はテッカグヤの宿り木外しが響いて、SNOW氏が取り返す。
3戦目
バルドル:先発カプ・コケコ ワルビアル 裏カプ・レヒレ テッカグヤ
SNOW:先発ボーマンダ メタグロス 裏ウツロイド マッシブーン
残り時間が3分ほどに迫った3戦目。今度は打って変わって、お互い速攻を目指す。
時間切れのアディショナルターンのルールがよく分からないが、時間が切れても4ターンくらいあったらしい。
SNOW氏がまずワルビアルを落とし、4対3でリードした状況で最終ターンを迎える。
ここでSNOW氏は、ウツロイドでHPが少なくなったカプ・レヒレを倒して試合を決めに行こうとするが、なんとレヒレが「ヘドロばくだん」をミリ耐え。
さらにレヒレが「ムーンフォース」でマッシブーンを撃破、テッカグヤが「ヘビーボンバー」をウツロイドの急所に当て、ウツロイドもダウン。
ポケモンの数が2対3と逆転し、試合終了。まさに終了直前の大逆転劇に、ニコニコで見ていた視聴者も大いに沸いた。
決勝(Day3)
3日目の決勝まで来ると、これまでずっと中継を担当してくれていたサントスさんが明々白々に疲れているので、可哀想になってくる。
私がそんなに頑張っている彼のためにできることと言えば、ツイッターアカウントを紹介してフォローを促すくらいだ。
シニアカテゴリ決勝
メカジキ氏(日本) VS H.N氏(韓国)
決勝は日韓戦となった。
昨年に続きファイナリストとなったメカジキ氏は、昨年準優勝の雪辱を果たせるか。
1戦目
メカジキ:カプ・レヒレ ウインディ 裏カミツルギ カプ・コケコ
H.N氏:カプ・コケコ ポリゴン2 裏ウインディ バンバドロ
メカジキ氏のレヒレがウインディへの「だくりゅう」を3発外すという不運。
それでもトリル下でスカーフカミツルギがバンバドロへ交代読みで「リーフブレード」を当てたのが大きく、トリル後には逆に場を制圧した。
日本のメカジキ氏が先勝。
2戦目
メカジキ:先発カプ・レヒレ ポリゴン2 裏ポリゴン2 カプ・コケコ
H.N:先発オニシズクモ コケコ 裏ウインディ バンバドロ
今度はレヒレがウインディに「だくりゅう」を急所に当てて、命中率も下げた。
しかし勝利目前になって油断したか、オニシズクモに2連「まもる」を通され、バンバドロにコケコが落とされてしまう。
デンキZを撃っていれば守る貫通でオニシズクモを落とせた気がするが……。痛恨のミスで1勝1敗に。
3戦目
メカジキ:先発カプ・レヒレ ウインディ 裏カプ・コケコ カミツルギ
H.N:先発カプ・コケコ ポリゴン2 裏バンバドロ ウインディ
ウインディ・レヒレVSポリゴン2・バンバドロの対面で、ウインディレヒレの集中攻撃でポリゴン2を倒しに行ったが、倒しきれず「トリックルーム」の発動を許してしまう。
一方、HJ氏はバンバドロで守らずに強気でレヒレを攻めたのが成功し、レヒレを落としたことによりバンバドロで一気に制圧した。
結果、HJ氏が2勝1敗で優勝。
メカジキ氏は2年連続の準優勝。悔しい結果となったが、それでも2年連続でファイナリストになった偉業は称えられるべきだ。
マスターカテゴリ決勝
バルドル氏(日本) VS Zelda氏(オーストラリア)
日本大会の頃から見てきたバルドル氏が、ついに世界の大舞台で決勝へ。
バルドル氏
出典:
- ワルビアル
- エルフーン
- カプ・レヒレ
- ガラガラA
- テッカグヤ
- カプ・コケコ
Zelda氏
出典:
- ガブリアス
- キュウコンA
- ウインディ
- バルジーナ
- デンジュモク
- カプ・テテフ
受け回しのバルドル氏と、積みアタッカーぞろいの氏の対決。
緻密な読みと粘りで勝ってきたバルドル氏と、強気に積み技を選んでパワフルに勝利してきたZelda氏。
余談だが、Zelda氏はラブライバーらしい。ツイッターのアイコンが穂乃果で、当日着ていたTシャツが梨子だった。
あとセジュン氏が言っていたが、シニアの部で優勝した韓国人プレイヤーもキャラの名前を「にしきのまき」にしているとか。
日本のアニメのワールドワイドっぷりには驚く。
さてポケモンに話を戻そう。ダブルでは珍しい積みPTに、トリル始動員がいないバルドル氏はエルフーンくらいしか切り返しがない。しかもエルフーンもカプ・テテフとバルジーナには弱い。
だいぶバルドル氏が不利だが、果たして。
1戦目
バルドル:先発カプ・レヒレ Aガラガラ 裏デンジュモク バルジーナ
Zelda:先発Aキュウコン ガブリアス 裏テッカグヤ カプ・コケコ
ガラガラがガブリアスに縛られている初手対面だったが、強気にガラガラを動かしてキュウコンを撃破。
しかし結局「オーロラベール」も貼られ、次のターンに剣舞を積んだガブリアスにジメンZでガラガラが落とされ、デンジュモクが止められなくなってしまう。
1本目はZelda氏が圧勝した。
2戦目
バルドル:先発カプ・レヒレ エルフーン 裏Aガラガラ カプ・コケコ
Zelda:先発ガブリアス Aキュウコン 裏デンジュモク バルジーナ
早々に選出を決断したZelda氏。バルドル氏はこれを見てテテフは出ないと踏んだか、エルフーンを選出。
エルフーンでガブリアスを縛り、ガラガラの「かわらわり」で「オーロラベール」を破壊したのが決め手だった。こんなところに壁対策を仕込んでいるとは、流石である。
2本目はバルドル氏が制し、これで1勝1敗のタイに。
3戦目
バルドル:先発 Aガラガラ エルフーン 裏カプ・レヒレ カプ・コケコ
Zelda:先発 ガブリアス Aキュウコン 裏バルジーナ デンジュモク
Zelda氏は3戦とも同じ選出。
これに対し、1ターン目にレヒレ後出しからのZ「しぜんのちから」でガブリアスを狩りに行ったバルドル氏。
だが、これをZelda氏が読んでいた。バルジーナを後出しし、悪タイプなのでいたずらごころ適用の「しぜんのちから」は無効で、頼みのZワザがいきなり不発、絶体絶命の状況に。
厳しい状況に思われたが、それでも"逆転の男"バルドル氏は諦めなかった。「おいかぜ」が自分だけ残っているターンに、レヒレとエルフーンの「ムーンフォース」をデンジュモクに集中させ、落とすことに成功した。
Zelda氏はこのターン、ガブリアスを守ってしまったのが痛かった。ここまでずっと強気の選択をしてきたが、最後の最後で読みを間違えてしまったか。この会心のプレイで形勢が逆転し、バルドル氏が見事世界王者に輝いた。
日本大会のJCSが終わった時、私はアメリカで彼らのうちの誰かが優勝するか分からなかった。
だが、その時に優勝したバルドル氏は、圧倒的な読み、不利な状況でもあきらめないハートの強さ、そして強運で世界を制した。
彼はとんでもない偉業を達成した。リアルタイムでその目撃者になれたことは幸運だった。
最後に、この新しい世界王者のtwitterとはてなブログを紹介しておくので、皆さんフォローしてあげてほしい。
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